このページには、暇を見つけて読書メモを綴っていく予定です。
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『総理大臣のえる! 花嫁がいっぱい』(角川スニーカー文庫、あすか正太)
発売されたのは3ヶ月近く前なのに、近所の本屋で見かけなかったから全然気付かなかった……。_/~|○
一緒に上遠野浩平の『しずるさんと偏屈な死者たち』(富士見ミステリ文庫)も購入したけど、これも出たのは1ヶ月以上前だし。《あらすじ》
女子中学生の身でありながら黒猫悪魔メフィとの契約によって「第92代日本国総理大臣」の座についたヒロイン・折原のえるが、その権力と腕力と胆力でもって世界各国の悪党と戦ったり、幼馴染の長谷川健太を振り回したりする、ドタバタラブコメの第6弾。
のえるは今回、健太を婚約者として連れ去った恋敵のシャイニィ王女を追って、多夫多妻制を敷く彼女の故国・アルカンタラ王国へ突入。
優柔不断で誰を選ぶか決められない健太に、驚愕の提案が突きつけられる。それは離れ島での「新婚ごっこ」によって、意中の人を選べ!というもの。
ところが、ゲームの参加者は、のえる・シャイニィの2人だけではなかった!
ひそかに健太を慕いつづけてきたクラスメイトの弥生ほのか、担任の桃園さくら先生、そして何の因果か、ほのかの親友・白峰忍や、のえる一筋の腹黒い百合娘・イブキまでが加わり、事態は混乱につぐ混乱。
果たして、その顛末は……!?☆
シリーズ物の強みというか、レギュラーキャラがそれぞれ独自ののポジションとスタンスを確保しつつ、王道的なドタバタラブコメを見事に演じきっている快作。
今回は政治や外交に関するリアリティを放棄して、徹底的にラブコメ一辺倒で話を進めたのが正解だと思う。ギャグの流れもテンポも絶妙で、読みながら何度も大声たてて笑ってしまった。……とはいえ、最近ありがちなギャルゲーの上っ面だけ撫でたような萌え小説とは一味も二味も違うのが本作の魅力。
何の脈絡もなくヒロイン全員にフラグが立って主人公モテまくり……といった理不尽な展開にはならず、サブキャラの絡み具合が面白い。特に、成り行きで「新婚ゲーム」に参加することになった白峰忍の不器用さと硬派ぶり(笑)は、萌えを抜きにしても好感が持てる。
そして、4巻以降メキメキと男を上げてきた木佐孝美先生が、今回も大活躍。彼が命がけでさくら先生を守る「真の理由」は、ラブコメの常軌を逸していて素敵すぎ。つーか桃園家が絡む場面はことごとく笑いどころデスよ。そんな利害と打算にまみれた(笑)大人カップルだけど、幸せになってほしいなぁ……とコソーリ応援してみたり。それも、決して「ストックホルム症候群」や「吊り橋効果」じゃない形がいいなぁ。今回いちばん存在感があったヒロインはシャイニィ。
恋愛について奇妙にズレた感覚を持つ彼女が、そもそも健太を自分の国に連れ帰ったのは、「結婚という”絆”によって愛を育むため」という本末転倒の動機から。
のえるに負けず劣らずの行動力を持ちながら、彼女が”本当の愛”を知らない理由とは。そして、シャイニィは今回の騒動の中で何を想い、どのように変わっていくのか……?というのが大きな見所だったりする。(以下、重要なネタバレにつき保護色表記)
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「私、日本にいる時に私の権限を利用しまして、国会図書館に収められている漫画のすべてを接収したのです」 「のえるみたいだ……」 「ノーベル賞学者を多数輩出している英国のシンクタンクに研究を依頼しました」 「したのか……」 出来るからって何でもやっちゃいけないよなぁ……と、健太は思う。 「その結果、私は『負けるために登場した当て馬2軍補欠サブヒロインタイプ』だと分析されました」 「すごいネーミング……」
(斜線部は『花嫁がいっぱい』P33から引用。)
自分のことをここまで言い切ってしまうのも、激しくメタ的と言うか何というか。 ☆ また、もう一つの重要なテーマである「選択」の扱い方も秀逸。
前述したように、今回の舞台は「多夫多妻制の王国」。ここに定住してしまえば、健太は何の気兼ねもなく全てのヒロインと結ばれることができる。ラブコメの主人公やギャルゲーのプレイヤーから見れば、掟破りの理想郷とも言えるだろう。 |
ぶっちゃけ、今回の話は、5巻以前を読んでいなくてもドタバタラブコメとして十二分に笑えるし萌えられる。
……でも、それぞれのキャラが積み重ねてきた「絆」や「想い」を踏まえて読むと何倍にも楽しめるから、やっぱり全巻まとめて読んでほしい。
4〜7月に読んだ中で印象深かったのは、川又千秋『反在士の指環』、山口雅也『13人目の探偵士』、筒井康隆『虚人たち』、西澤保彦『人格転移の殺人』、蘇部健一『六枚のとんかつ』、殊能将之『ハサミ男』、西尾維新『ヒトクイマジカル』等。
感想や紹介は、そのうち時間ができたら。
山田風太郎『甲賀忍法帖』
時は江戸時代。三代将軍の座を巡る世継ぎ争いに決着をつけるため、徳川家康は恐るべき決断を下す。
それは伊賀・甲賀から人知を越えた忍術の使い手を十人ずつ選び出し、互いに殺し合わせるという、歴史の影で繰り広げられた壮絶な”代理戦争”だった……!!……古くから熱狂的なファンを呼んだという山田風太郎の「忍法帖」シリーズ第1作。
寡聞かつミーハーなことに、自分は『ヤングマガジンアッパーズ』連載のコミック版『バジリスク〜甲賀忍法帖〜』(作画・せがわまさき)で、この作品を知ったクチ。
漫画の方もハイクオリティで面白いんだけど、先の展開が気になって気になって古本屋で原作を購入し、ちょうど今アッパーズで連載してる辺りまで読み進めた頃にうっかりゲーセンで紛失してしまい、泣く泣く図書館で借りて読破した……という因果な話があったり。今の少年漫画で一つの主流になってる”能力系バトルアクション漫画”の原点ともいえるエッセンスが随所に溢れていて、まさに時代を超えたエンターティメントの名作。
敵味方十人ずつの名前が記された巻物から、一人倒れるたびに血の墨で名前が消されていく……なんて設定は『風魔の小次郎』の夜叉一族編を彷彿とさせるし、それぞれの持ち技があまりにも特異すぎて、「相手の術(特殊能力)を知ることが勝敗に直結する」「ごく一部の例外を除いて”万能の強さ”を誇る者はなく、組み合わせの相性やシチュエーションによって戦況が激変する」辺りは『ジョジョ』のスタンドバトル的な感覚に近い。
……もちろん、どっちが古いか新しいかは弁えてるし、パクリ云々言う気も毛頭なし。要は、その手のバトル漫画が好きな人なら問答無用でハマれる面白さだってこと。また、文庫版の解説で浅田次郎も触れてるけど、時代小説でありながら「メートル」「クライマックス」等の現代語を織り交ぜた平易でビジュアリスティックな文体や、(ネタバレになるんで具体名は出さないけど)何人かの”術”や”特異体質”を現代科学の用語で理屈づける、ある意味「民明書房」的な胡散臭いサービス精神も、また非常に漫画的だと思う。
特に、一目見ただけで頭に焼き付いて離れないサブタイトル「甲賀ロミオと伊賀ジュリエット」には、ただただ感嘆するばかり。とりあえず、今積んでるミステリが一段落したら、しばらくの間は山田風太郎の忍法帖シリーズを読み漁る予定。
つーか『忍法忠臣蔵』には、題名だけで降参するしか。
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